ネタバレはあくまでも詳しくなりすぎず
流れを理解できるくらいの内容となっておりますので
詳細が知りたい方はいずれ出るDVDやBDを購入することをオススメします!
第40話 焼野が原③/焼野が原④
内容ネタバレ
<Chapter.81 焼野が原③>
受けるすべがない手を打たれた島田は
改めて目の前にいる男の強さを感じていた。
それでも悩みながらもとっさに指した手は
柳原としてもいい判断だと思えるような手で
島田なんてどうせほっときゃ勝手にまた勝ちだすさと言っていた
後藤の言葉を思い出し同意していた。
地味に地道にコツコツと積み上げまた一枚分厚くなって戻ってきた
島田はゆっくりとしか大きくなれない代わりに
雨風に耐え硬くてでかい木のようだと。
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そんな島田に対し自分を例えるならなんだと考えたものの
答えはなくたとえてくれる先人ももはやただ一人としていなかった。
そんなことをつらつらと考える内に
柳原は自分は負けるのだと理解する。
ずっと考えていた。
俺から将棋をとったら何が残るのだろう・・・。
集まった関係者らも柳原の劣勢を感じているようで
永世に届かなかったことを嘆き、むしろここまでよくやってくれたと
様々な声をあげていた。
身体に巻き付くようにあったたすきが自分から離れていくのを見て
昨夜のがんちゃんの言葉が脳裏に浮かぶ。
こぇーなぁ、こえぇーよ朔ちゃん・・・。
まるで焼け野っ原にいるみてーだ・・・。
その瞬間、柳原はこれは俺が絶対に手放しちゃいけねぇもんだ、
オレが担いで届けるものだと血相を変えて離れ行くたすきを手繰り寄せる。
精一杯頑張った人間が最後に辿り着く場所が
焼野ヶ原なんかでたまるものか!と奮起して指された手は
誰もが予想していない手だった。
それは時が経てば焼け野っ原には嫌でもまたあっという間に草が生え一面の緑になる。
それを一緒に見るんだよ!という想いが願いが込められた一手だった。
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<Chapter.82 焼野が原④>
限界をとうに超えているのは見ているだけでもわかった。
泥の様に重たげな体を脇息にあずけ
ただのめるように盤を見つめる。
けれどその震える指から繰り出される一手一手は
ゆっくり溢れ出す溶岩流の様に重く紅く煌々と輝き
棋士ならば誰もがこんな将棋を指してみたいと
心の底から思わずにはいられないような激闘だった。
そして169手にも渡った大激闘は島田の振り絞るような一言で
幕をおろし、ついに柳原は通算十期、永世棋匠の座へと就くのだった。
感想戦をすることなく皆が集まった場所へ訪れた柳原は
がんちゃんにここにいるみんなで撮って欲しいと願い
そこには惜しくも敗れた島田や零達そして
遅まきながらやって来た神宮寺会長も加わっていた。
かけられた期待はたすきとなり
時に身動きさえ取れぬ程重いものであったが
火だるまになる恐怖からも重く逃げ出させぬように
縛り付けてくれていたのだと笑みを浮かべるのだった。
皮肉なもんだと呟きながらだとしたらオレはひょっとして
この重さのおかげでここまで逃げずに来れたとも
言えるのかと神宮寺と二人飲みながら考えていた。
突然でも礼は言わんぞ!と叫び出した柳原に驚く神宮寺だったが
ふと柳原が来年はもう無理だろうなと呟くのを聞き
まだまだわからんよと吹き出していた。
どうやら去年も同じセリフを言っていたらしく
二人は去年と同じような事を話しながら
気の置けない者同士祝杯をあげるのだった。
感想
いや~今回は最初から最後まで
かなりアツい戦いでしたね!
どちらも負けられない戦いというのは理解していましたが
それでも勝敗はつくわけですから
なんとも厳しい世界だと思います。
まあ、人生において負けられない戦いなんてものは
誰でも一度や二度はありそうなものですが
棋士特にタイトル戦ともなれば
その重圧は想像しただけで重いですからね。
それでも最後の最後で柳原棋匠が勝利したわけですが
実力的にはそう違いはなかったかと。
それは2-2まで追い詰めたことで明らかですし
あとほんの少し何かがあれば
勝敗は逆になっていた可能性もあるでしょうしね。
改めて言いますがこういうアツい戦いは
何度見ても良いものだと思いますし
これからも何度となく見たいものです。
それにしても疲れでわけわかんなくなっているのか
柳原棋匠とっくに還暦過ぎているのに
まだ還暦前と思っていたとは・・・。
正直ボケてんのか?と思ってしまうような出来事ですが
会長曰く去年も同じような事を言っていたらしいので
来年も同じような事を呟くんでしょうね(苦笑)
出来る事ならその場面が見られる程
連載し続けて欲しいものです。
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